⑬夢のような経験〜朱 相憲(4年 体育学部)〜

部員ブログ

〜部員ブログ⑬〜

『夢のような経験』

みなさん、初めまして。朝鮮大学校サッカー部学生フィジカルトレーナーのチュ・サンホンです。 
これから自らの夢のような経験を書かせていただく前に少しだけ自己紹介させていただきます。 

私は小学校4年生から大学2年生までゴールキーパーとしてプロのサッカー選手を目指していましたが、現実性を考えて選手としての道を諦め、トレーナーとしての道を目指すようになりました。トレーナーを選択した理由は、大学一年生の秋あたりにいわゆる“筋トレ”に目覚めまして、もっと体のことについて理解したいという思いが強くなったのが一つの大きな理由です。現在はサッカー部のトレーナー、それから神奈川朝鮮中高級学校サッカー部GKコーチとして活動しつつ、自身のボディメイクも欠かさず行っております。 

それでは自己紹介はこの辺で終わらせていただき、肝心の“夢のような経験”について書かせて頂こうと思います。 
それは、サッカーJ1リーグ横浜FCでの3週間のマネージャーインターンシップ体験でのことです。 
サッカーをやっている人なら必ずと言っていいほど憧れを抱くであろうレジェンドたちがプレーしている横浜FCでマネージャー業務のインターンシップを体験できたのです。 
なぜこのインターンシップが実現できたのかというと、朝鮮大学校体育学部の新たな取り組みとして日本の企業に生徒を現場実習という形で送る最初の活動で横浜FCでの現場実習が行われまして、光栄にも私が行かせていただくことになりました。 
インターンシップの知らせを聞き、緊張と、大学の代表として行かせていただくことに対するプレッシャーなど不安要素を感じざるを得ませんでしたが、それよりも早く行きたいという楽しみの方が勝っていました。 
もちろん、プロのサッカーチームでのマネージャー業務という貴重な経験をできるという楽しみにの他に、トレーナーとしてプロのサッカーチームでのフィジカルコーチやトレーナーの役割や現場での仕事、さらにGKコーチとしてゴールキーパーコーチの練習や指導法などプロの現場をこの身を持って実感できるという楽しみもありました。 
業務内容としては、練習道具の全般の準備や練習中の選手のサポート(水補充など)、リーグ戦への帯同、練習着やユニフォームの洗濯などマネージャー業務全般の仕事でした。 
チームの全体練習時には、横浜FCの錚々たるメンバーが集い、コーチングスタッフの下でトレーニングをする姿はものすごく迫力があり、初日目から最終日までその刺激は切れることはありませんでした。 
1日の大まかな流れとしては、練習前に全ての道具の準備を行い、練習中は選手たちの練習のサポートをして、練習が終わればトレーニングウェアなどの洗濯を行い時間があればクラブハウスや周辺の清掃などを行うというような流れでした。また、リーグ戦に帯同でき選手の控室などの整理や清掃なども行いました。試合開始前の選手たちのミーティング時の緊張感は、今まで感じたことのないものでもありました。 
そんなサッカーをしている人ならば誰もが羨ましいと思う貴重で夢のような3週間を選手たちやクラブスタッフの側で過ごしながら選手、スタッフ全員のプロとしての自覚、いうならば自分の好きなことを仕事にしているというただ楽しくサッカーをしているという訳ではなく、仕事としている以上自分の生活やチームの残留など、ありとあらゆるプレッシャーの中で戦っているのだなと肌身で感じることができました。その中で私が、一在日コリアンとして強く思ったことがあります。それは、このクラブで選手、スタッフで活躍している朝鮮大学校出身者の大先輩方がいらっしゃるということでした。この3週間、マネージャーの業務を体験させていただいて、決して難しいことではないけれどかなりハードな仕事でした。選手ではもちろん、“社会で働く”という厳しさを実感しましたが、この厳しい社会で人の上に立って高いレベルで働いている大先輩たちを見ながら、この方達がどれだけの努力をしてどれだけの修羅場をくぐり抜けて人生を歩んできたのかというのを深く考えました。この日本という国で、“朝鮮人”という民族のアイデンティティを大切にして生きていくことは、本当に簡単なことではありません。ですが、日本社会で大先輩たちのようにアイデンティティを大切にして日々戦う姿を見て、強くカッコ良く生きていくというのはこういうことなのかと思い知らされました。 

朝鮮大学校サッカー部には、プロを目指す選手もいればそうでない人もいます。私は、プロになろうが違う道を進もうが、必ず人生には試練が立ちはだかると思います。その時に、その試練と真っ向勝負できるかどうか。私たち在日コリアンに共通する“諦めずに闘う”というアイデンティティを持って進んでいけば、自ずと見えなかった世界が見えてくるのだと思います。 

私は今回のインターンシップがなければ、このようなことを考えることもなかったかもしれません。今回の機会を設けてくださった母校と横浜FCに深く感謝しております。 

自分の語彙力の無さに驚いていますが、私の思いがどうか伝われば幸いです。 
大変な時期ではありますが、力を合わせてこの“試練”に打ち勝ちましょう。 

選手紹介

名前:朱 相憲(チュ サンホン)
誕生日:1999.09.01
学部:体育学部
出身校:東京朝鮮高校
ポジション:フィジカルトレーナー
好きな言葉:魂
好きな選手:安英学
一言:魂進